わかばの風法律事務所 弁護士のBlog

東京都新宿区にある法律事務所

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成人年齢引下げ、このままで大丈夫か

 「18歳で成人だということが決まりました」と言っても話はそれで終わりません。一部反対という雑感を述べたいのです。

 まず、成人というのは「民法上そうなる」ということです。「それならいいではないか民法が生活の基本を決めているのでしょう」という反応は
健全且つ正しいのですが、例外があります。それは「特別法は別だ」といいうことです。
 具体的には「少年法をどうするか、18歳から、これまでの成人と同じに、通常の刑事裁判手続きにするのか」「金銭・契約などでこれまでの成人と同じ扱いにしてよいのか、18歳くらいでは詐欺もしくは類似の事件あるいは不利であることのわからないままサインするなどで、さまざまな形で被害者になりやすい、そこを放置するのは大変心配だ」ということです。いずれも特別法で例外の定めをするべきだと言う議論に結びつきます。詐欺被害などについては、結局、なんらかの保護規定を設けるか・そのための特別法を作るかという話しになるでしょう。例えば「保証人にはなれない」とか「一定金額以上は扱えない」とか「契約しても場合によっては取り消せるようにする」などです。

 少年法については意見が分かれるだろうと思います。それは、非常にセンセーショナルな事件が起きたり、大きく報道されたりすることも一因だろうと思います。「こんなことをするとはけしからん厳罰にすべきだ」という考えが増えていくと、特別扱いは不要だということになりやすいでしょう。この点について弁護士で少年事件を扱っている人の意見は「少年の矯正・社会復帰という面で少年法による運用は、おおきな成果を上げてきている、現に統計上少年事件が減ってきているのはその運用によるところが大きい。従って現行制度を維持すべきだ」というものです。はっきりとした統計上の根拠に基づいての意見です。弁護士の多数はこれに賛成しています。私もこの意見に賛成します。私なりの意見を付け加えると、人一人が社会復帰することは、目に見えにくいが全体として非常に有益であるというものです。それと「どんな人にも、どんなケースでも最低ワンチャンスを与えるべきだ」と考えるからです。人とはそう強いものではない、誰にでも失敗くらいはある、というのが実感だからです。皆さんはどのようにお考えでしょうか。

 お金についての問題、特に詐欺被害やそれと知らずに不利な契約を結んでしまうケースが想定されるため、18・19歳段階では、はっきりと「保護規定が必要だ」と考えます。それはほんとに多くの法律相談をやってきたからです。大人でも同じですが、優しくて素直な人が騙されやすいのです。被害といっても、若い人には財産はないのですから、実際には「借金を負わせられる」のです。つまり、18・19歳という時点で、つまり人生の実質的な出発点で「マイナスにされてしまう」のです。これは許されるべきではないでしょう。本来、成人であっても、騙された人は同情されるべきであり、放置すべきではありません。まして18・19歳ではなおさらです。これまでの職業的な体験から断言します。

 「騙される方が悪い、愚かだ」という考えは広く存在しています。ですがそれは唾棄すべきものです、捨て去ってください。「騙すほうを放置してよいのですか?どちらが悪いのですか?」と正面から問われると、大多数は、「それは騙す方がよくない」とお考えになるでしょう。実際に、学生時代に友人を助けるつもりで裏切られたようなケースは、非常に重大な人間不信に陥ります、見ていても大変辛い状況になります。勿論高齢で被害に遭った方も同じように同情さるべきです。生活という点では高齢者の方が大変ですが、それは財産を取り戻すという内容です。18・19歳時点では、マイナスからの出発ということになるのです。そうならないように保護されることは必要であり、社会にとっても絶対に有益な結果をもたらします。

 今後の方向を決める立法に向けての動きが今始まっていますが、上記の私の意見に対する多くの方の賛同があれば必ず保護法制への力になると確信しています。
                                      以上

                     平成27年11月 弁護士 小林政秀

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