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わかばの風法律事務所 弁護士のBlog

東京都新宿区にある法律事務所

4人の弁護士が、身近で起きた事や感じた事を紹介します

適性な弁護士人口はどれくらい?

1 理想

 法曹人口は毎年500人の時代が続きましたが、1991年(平成3年)以降少しずつ増え、1999年(平成11年)には1、000人、2002年(平成14年)には1、200人、2004年(平成16年)には1、500人までになりました。その後、毎年の法曹人口の数を3,000人に増やし、2010年(平成22年)に司法試験合格者を3,000人に、2018年(平成30年)には裁判官、検察官を含めた法曹人口を5万人にするということになりました。
 これは、2001年6月に出された政府の諮問機関である司法制度改革審議会の意見書で提案されたものでした。その目的は、今後国民の生活において法曹の役割は大きくなるし、まだまだ全国的にも弁護士がいない地域が多くあり、また、経済金融の国際化の進展や人権、環境などの地球的課題などで紛争も多様化、高度化してゆくので、それに見合った法律家を「国民の社会生活上の医師」として多く作り出す、また弁護士、裁判官、検察官だけでなく、社会の様々な団体、企業、公共団体にも法律の資格をもった者が多数参画し、全体として社会の隅々に法律家が活動する社会をつくることが必要だとされたためでした。


2 外国の例
 当時、日本の法曹人口は諸外国と比べても少ないという事情も勘案されました。例えば、2001年当時、法曹人口は日本が20,000人(法曹1人あたりの国民の数は6,300人)、アメリカが約941,000人(同約290人)、イギリスが約83,000人(同約710人)、フランスが36,000人(同約710人)でした。


3 現実は
 弁護士会も法曹人口を大幅に増やすことは賛成し取り組んできました。ところが、今は、毎年の司法試験合格者は2,000人前後に止められ、3,000人はとても実現不可能な数とされています。
 何故でしょうか。司法試験合格者は、その後1年の司法修習を経て、弁護士、裁判官、検察官になってゆきますが、一番の原因は、毎年多くの弁護志望者が法律事務所への就職先がなく、すぐに独立して開業するとか、そもそも弁護士登録もできない事態が生じたからでした。弁護士の仕事は、医師と同様に、資格を取ればすぐに法律の紛争を手掛けることができるというわけにはいきません。法律事務所に入り先輩弁護士と一緒に具体的な法律紛争に関わり、「生きた法律の適用」「実務のトレーニング」を学ばなければ、一人前の法律家、弁護士にはなれません。そうした訓練を受けない法律家が生まれれば、結局、困りごとを抱えた国民の権利、利益を法律家として擁護してゆく要求にも応じられない、かえって害になるような結果となります。
 また、社会の様々な団体、企業、公共団体にも法律有資格者として参画してゆけるという考えも、現実にはそう容易ではないという現実もありました。
 現在、毎年の司法試験合格者は2,000人前後に止められていますが、この数でもまだ登録できない者が毎年400人前後も出ています。このためか、最近では大学の法学部に入学する学生も減り、定員割れをする大学も出てきました。
 結局、増加した法律家を社会が受け入れる容量が大きくならなかったというのが一番の原因でした。


4 外国とは違う
 では、どうして外国は日本と比べ法曹人口が多いのでしょうか。外国では法曹人口を受け入れる社会的な仕組みが日本と異なっていました。
 まず、司法予算が違います。司法制度は社会のインフラとして必要なもので、法律家のためにあるものではありません。そのためには予算が必要です。例えば、経済的に厳しい国民を支援する法律扶助の額を見ても、日本は43億円に対し、イギリスは1,630億円、ドイツで508億円、フランスで269億円です(2010年度統計)。国民一人当たりの額を見れば、日本は34円に対し、イギリスは2,690円、ドイツで616円、フランスで426円です。今の社会では、労働分野でも福祉分野でも経済や環境問題でも困った人は多くいます。法律の助けを借りなければならない紛争も多くあります。でも、一定の経済的な裏付けがなければ弁護士や裁判所に相談には行けません。法律家の数を増やしても、それだけでは「国民の社会生活上の医師」にはなれない訳です。
 また、司法書士行政書士、税理士、弁理士など同じく法律に関連する業務に携わっている隣接士業も外国では多くを弁護士が担っているのに対し(アメリカの弁護士の数が多いとされるのもこのためです)、日本では独立の士業として活動しています。例えば、司法書士行政書士、税理士、弁理士などの隣接士業の数は、現在でも14万人以上となっています。現在の弁護士数35,000人と合わせても、すでに約18万人前後の法律実務家がいることになります。


5 適正な弁護士人口はどれくらい?
 弁護士会では、今、毎年の司法試験合格者を1,500人まで減らすよう提案しています。
 これでも、将来、弁護士人口は5万人になると言われています。法律の専門知識をもった弁護士が社会の中でもっと有効に身近に活用されることはいいことです。
 そのためには、結局、増加した法律家を社会が受け入れる容量を大きくすることでしか解決しないでしょう。国民が司法や法律家を利用しやすくする制度をどう作り出すのか、法律扶助などの司法予算を増やし、裁判官、検察官も増やし、裁判所の手続きをもっと安価で利用しやすいものとし、社会の様々な団体、企業、公共団体に法律の資格をもった者が多数参画してゆけるような整備を推し進めるほかはないようです。
                              弁護士 森田太三

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