福島第1原発事故の現地訪問相談会を担当して
2011年3月11日の大震災,それに続く福島原発事故は一年たっても大きな傷跡を刻している。復旧から復興へ,その道のりは険しいがこの国を挙げての取組みが再生日本の礎になることを心から祈る。
昨年,夏に弁護士仲間と岩手県大槌町にボランティェア活動に行き,本年3月には南相馬市の仮設住宅,7月には福島駅付近の会場での原子力損害賠償支援機構が開催する現地法律相談に参加した。
東京電力が独自に行っている賠償請求に関する不満,文科省が設置している原子力損害賠償紛争審査会(ADR)への説明と具体的な被害相談が行くたびに段々と具体手な内容となってきている。
東電の書式による賠償請求は,加害者側の自主的な賠償でありどうしても一定の限界がある。そこで満足できない相談が,私たち弁護士が担当する賠償支援機構が開催する現地訪問相談に寄せられる。
妻が鬱になって日々苦しい生活を送っている。介護施設に入った母親が施設の緊急移動で2カ月後に急逝した。母親が地震で病院に入院した後,原発事故で病院が閉鎖されることになり,その後心不全で死亡した。住宅ローンを支払っているが避難地域での見直しがはっきりする間ローンを支払い続けた方が良いのか,ストップして次の移転先を探した方がいいのか迷っているなど。東電の書式では対応できない新たな問題が具体的に生じ始めている。
東北の弁護士だけでなく,東京の弁護士もできるだけこの支援活動に参加してゆきたい。弁護士の役割をあらためて考えさせてくれる場に身を置く時代である。
2012年7月 森田太三