わかばの風法律事務所 弁護士のBlog

東京都新宿区にある法律事務所

5人の弁護士が、新しい法律や身近で起きた事、感じた事をご紹介します

「投資」はプロがやるべきです。

1.不景気の拡大

 「日本には影響が殆どない」などと言われていたのに、サブ・プライム発の不景気が深刻です。結局、アメリカの過剰消費に依存していた面が大きいから、アメリカの家庭が節約を始めると日本の輸出にも影響してきた、ということになります。
 過剰消費を可能にしたのは何故か、について原因をきちんと整理すべきですが、その反省もこれからでしょう。ここでは原因は何か、という経済学ではなく、消費者問題を扱ってきた経験から、法律的な面も加味した意見を書いてみます。

 

2.日本政府の方針

(1) 「日本版ビックバン」という言葉を覚えていますか。
 これは、改革というラベルは貼ってありますが、「貯金ばかりせずに投資信託や株を買いなさい」ということです。
 「リスクをとるべきだ」という言葉も政府の明確な方針として出ています。しかも、この方針は現在も維持されています。
(2) よく、「直接金融、間接金融」という言葉や、「景気回復には世代間の資産移転が必要だ」という言葉を耳にしませんか。わかりやすく表現すると、「銀行預金ではなく、(株式)市場に金を投じなさい」「高齢者の貯金をそのままにしておくと(あまり使用しないので)景気に役立たないから、何とかして市場で使って下さい」ということと同義です。(子供に金を渡すと贈与税をとられます)
(3) その為に華やかな(?)議論があります。「投資信託こそ決定打」だとか、「金融工学」などなどです。一方で「自己責任」ということが強調されます。念のために繰り返しますが、これは「ビックバン」以来の政府による方針なのです。しかも、幅広い国民に向けた方針です。

 

3.投資はプロが行うべきです。
(1) 被害者の相談(株、先物、場合によっては保険商品など)を受けてきた立場から申し上げますと、「素人は絶対おやめなさい。そもそも素人を勧誘すること自体おかしい」と考えています。「市場」なるものが仮に不可欠だとしても、それは「プロ」が参加すべきです。
 念のために、「リスクをとる」とか「自己責任」という言葉は、法律上は「敗訴」に結びつきます。つまり、誰も賠償してくれない(泣き寝入り)のです。刑事事件にもまずならないだろうと考えて下さい。
(2) プロがやるべきだ、と考える理由の1つに、金融工学に基づく「複雑な商品」の登場があります。「リート」だとか「FX」なども大変理解が困難です。「やさしい」と思っている方は、どこか誤解があると思って下さい。しかも、投資信託にもリスキーな商品が組み込まれていることは、もはや珍しくありません。
 では、「預金」はどうか。実は預金も「外貨」を組み込んだり、金利の変動する商品などが出てくると簡単ではありません。つまり、もはや理解すること自体が困難なのです。「訳の分からないものを買って大金を出して良いのですか」と聞くと、たいてい方は「私は絶対そんなことはやらない」と言います。それならやめるべきです。昔安かったものが今は高い、ということは身近に経験していると思います。例えば、魚ですね。何故高くなるかというと、あまり獲れなくなったとか、世界的に需要が多くなったとかが話題になるはずです。さて、そこです。形のうえでは同じものでも、周囲の状況が違ってくるともはや違うものなのです。特に「投資」についてはそこを肝に銘じておくべきです。最もわかりやすく言うと現物株です。市場の構造が変化しているため、これまでのような予測が通用するかどうかわかりません。例えばTOPIXに連動させるとか、一定の数式に基づいて自動的に注文を出す、という方法は値段に影響しますが、そんなことは判断できますか。対象が同じだから値段の予測も同じではないのです。つまり「訳の分からないことでは同じですよ」という結論をとるべきだと思っています。

 

4.プロに任せるのはどうか?
 次に、ではプロに任せよう、投資顧問業もある、とお考えになる方も出てきます。実は私はこれにも反対です。何故なら、(当然ながら)結果を保証するわけではないからです。プロだからと言って絶対大丈夫なわけはありません。もし、そのような人がいるならば、その人は自分でやれば済むことですし、むしろ秘密に行わないと、利益にはならないはずです。
 結局、参加して良いのは「自分でリスクをとる覚悟と、資金力と知識がある人」もしくは、銀行などを含む機関投資家だけだと思います。

 

5.経済は大丈夫か?
 そんな心配は不要です。皆さんがご心配する必要はないですし、貯金を無くしてしまったらそれこそ生活ができなくなり、その意味で経済も悪化します。また、実物経済と結びついてこそ市場なるものも健全であり、意味を持つのです。「多くの人が(気軽に)参加できる儲かる市場」は単なる幻想に過ぎず、米国発のサブプライムショックはそのことを示していると私は考えています。
                                    以上

                                  小林政秀

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