わかばの風法律事務所 弁護士のBlog

東京都新宿区にある法律事務所

5人の弁護士が、新しい法律や身近で起きた事、感じた事をご紹介します

配偶者居住権

第1 配偶者の居住権を保護するための方策


 1 配偶者居住権(1028条以下)


(1) 従来の扱い

夫と妻が、夫名義の建物で2人だけで生活していたが、夫が死亡したとしましょう。遺産は、夫名義の土地・建物(時価2000万円)と預貯金(2000万円)です。夫の法定相続人は、妻と2人の子で、子は2人とも独立しています。
上記のような例では、妻と子らの親子関係が良好であれば、子らは、母親が父親の遺産で老後を過ごせるよう配慮して遺産分割をすることになります。
しかし、親子関係が悪化していると、そのような配慮は期待できず、法定相続分に従い遺産分割をすることが多いでしょう。
そうすると、妻が住み慣れた家に住み続けるため、土地と建物を相続しようとすると、妻は預貯金を相続できません。遺産全体の評価額は4000万円(土地・建物と預貯金の合計額)、妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分はそれぞれ4分の1ずつですから、妻は時価2000万円の土地・建物を取得すればそれ以上は取得できず、残りの預貯金を子が1000万円ずつ分け合うことになるからです。
しかし、これでは、妻は住み慣れた家に住み続けることができても、預貯金を全く取得できません。妻自身にあまり預貯金がない場合、妻の今後の生活に支障が生じる可能性があります。


(2) 改正の内容
そこで、改正法は、残された配偶者保護のため、被相続人の配偶者(生存配偶者)は、被相続人所有だった建物に相続開始時に居住していた場合において、①遺産分割で配偶者居住権を取得するとされたとき、または、②配偶者居住権が遺贈されたときは、その居住建物の全部につき無償で使用収益をする権利(配偶者居住権)を取得するとしました。
配偶者居住権を取得した生存配偶者は、相続時に「配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続」したものとされ、その分を具体的相続分から控除されることになります。


(3) 実務に与える影響
配偶者居住権の創設により、上記の例はどうなるでしょうか。
例えば、配偶者居住権の財産的価値が500万円だとすると、妻は、配偶者居住権のほか、預貯金1500万円を取得できることになりますから、その後の生活費に困ることは少なくなり、説例のような不都合は改善されることになりました。他方、2人の子は、土地・建物及び預貯金500万円を分け合うことになります。
このように配偶者居住権は、建物使用者(配偶者)と所有者を異にする制度ですので、配偶者と建物の所有者との関係が良好でないと、円滑な運用は難しいと思われます。特に、遺贈により配偶者居住権を取得させる場合は注意が必要でしょう。

 

 2 配偶者短期居住権(1037条以下)


(1) 従前の扱い
夫と妻が、夫名義の建物に同居していたが、夫が死亡したとしましょう。夫の法定相続人は、妻と、先妻との間の子2人の合計3名です。夫が死亡するや否や、先妻との間の子2人は、妻に対し、「この建物は私たちの共有だ。あなた(妻)が一人で住み続けるのならば、家賃相当額を直ちに支払ってほしい。」と言い出しました。妻は家賃相当額を支払わなければならないでしょうか。
従前の判例は、特段の事情のない限り、被相続人の死亡後遺産分割協議が成立するまでの間、使用貸借関係の成立を認め、家賃相当額の支払を不要としていました。この判例を参考にして、今回の改正で創設されたのが配偶者短期居住権です。


(2) 改正の内容

改正法では、生存配偶者が、被相続人の財産に属した建物を相続開始の時に無償で居住していた場合、次の①及び②の期間、居住建物を無償で使用する権利を有するとしました。

① 居住建物について、配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合、(ア)遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日、または(イ)相続開始の時から6か月を経過した日のいずれか遅い日までの期間(したがって少なくとも6か月間は居住可能)


② ①以外の場合、居住建物取得者は、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申し入れをすることができるが、この申し入れの日から6か月を経過した日までの期間


(3) 実務に与える影響
配偶者短期居住権は、生存配偶者に一定期間無償で建物に居住することを認め、建物の明渡しを猶予する制度です。
もともと、被相続人と同居していた生存配偶者は、判例法理で一定の保護は図られていましたが、改正法では、その内容や成立要件が明確に規定され、問題が生じる場面が少なくなり得ると思われます。
なお、上記1記載の配偶者居住権とは異なり、配偶者短期居住権の場合、短期居住権の取得による利益は具体的相続分には算入されません。

 

弁護士 油木 香

遺言制度に関する見直し

 ここでは,自筆証書遺言の方式の緩和と自筆証書遺言の保管制度の創設及び遺言執行者の権限の明確化等についてご説明します。


1 自筆証書遺言の方式の緩和


(1)従来の扱い

 自筆証書遺言(自分で作成する遺言)については,遺言書の全ての文面を自筆で書く必要がありました。例えば,財産が山林,農地,有価証券,貴金属,預金等沢山にわたる場合でも,全て自署しなければ有効と認められませんでした。しかし,これでは作業が大変で,特に高齢者の場合には作成が困難となりますし,間違った場合の訂正も大変でした。


(2)改正の内容

  • そこで改正法では,自筆証書遺言の本文は自署が必要ですが,相続財産の目録については自署を要しないとしました(民法968条2項)。したがって,目録はパソコンによる作成や代書でも構いませんし,不動産の全部事項証明書や預金通帳のコピーを目録として使用することもできることになりました。但し,偽造等を防ぐために目録の各ページに本人の署名と押印が必要です。
  • 本文・目録の加除訂正 加除訂正の方法については従来と同じです(民法968条2項)。本文も目録部分も同じ方法によって加除訂正しなければなりません。目録全体を差し替える場合も注意が必要です。詳しくはご相談ください。

 

(3)実務の影響

 財産が多種にわたってある場合,また不動産が複数ある場合,これを自筆証書遺言で作成することは大変でした。また,高齢化社会の現在では,手間のかかる方法は敬遠されます。したがって,従来こうした場合は公正証書遺言を作成するのが一般でした。今回の改正法は,この様なケースでの自筆証書遺言の作成を容易にする利点があります。
 但し,自筆証書遺言の作成自体を争う遺言無効の訴えや後日の遺言執行のトラブルを避けることになるかは疑問です。
 死後のトラブルを避けるために慎重に遺言を作成するなら,やはり公正証書遺言の方をお勧めします。
 なお,この改正は平成31年1月13日から施行されています。


2 自筆証書遺言の保管制度


(1)従来の扱い

 公正証書遺言は公証人役場で厳重に保管され,どこの公証人役場に保管されているか検索することができます。しかし,自筆証書遺言を保管する制度はありませんでした。これではせっかく作成しても紛失したり隠匿されることになっては意味がありません。


(2)改正の内容

  • そこで改正法では,法務局が遺言書の保管所となることになりました(遺言書保管法2条)。申請は遺言者本人が行い,第三者は行えません。また,自筆証書遺言は封をしない状態で申請します。
  • 法務局では遺言書原本を保管するとともに,保管遺言が災害等で滅失しないよう遺言書をデータ化して画像データも保管します。
  • 遺言者は,いつでも遺言書の閲覧ができます。また,保管の申請の撤回もでき,遺言書の返還を請求できます。いずれも,本人が保管場所に出向いて申請することが必要です(同6,8条)。
  • 遺言者が死亡した後は,どこの法務局に対しても,自己(請求者)が相続人,受遺者等となっている遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます(同10条)。また,その存在が分かれば,関係相続人等はどこの法務局に対しも,遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求ができます(同9条)。

 

(3)実務の影響

  自筆証書遺言の作成が容易になれば,これを適正に保管することも必要になってきますので,一定のニーズがあると思います。そうなれば,親族が死亡した場合には,法務局に遺言書保管事実証明書の交付を請求することが必要となってくるかもしれません。
 但し,法務局は保管するに当たり,その遺言の保管申請が本人によってなされたことは確認できますが,遺言の内容や遺言者に遺言証書を作成できる能力があったかどうかをチェックすることは行いませんから,その点のトラブルは残ります。

 

弁護士 森田太三 

マイナンバーの申告拒否をどこまで貫けるか!?

 平成28年1月に「マイナンバーの申告を拒否するとどうなるの?」というタイトルで、法律上申告義務はあるけれど、罰則はないし、拒否しても実際上は問題ないはずだという趣旨のコメントを書きました。

http://www.wakaba-lo.jp/advicekako.html#14

 実は、私自身、まだマイナンバーの通知カードを受け取っていません。当初はそこまで強固にマイナンバーに抵抗するつもりはなかったのですが、世帯主が受領拒否してしまったので、わざわざ取りに行くのも抵抗があり、いっそのこと、どこまでマイナンバーなしで頑張れるか、やってみようと実践中です(笑)。

 この一年間、弁護士会を始め、様々な機関からマイナンバーの提供を求められましたが、「通知カードを受け取っていないし、マイナンバー制度に反対の気持ちもあるので、できれば申告せずに済ませたいのです」と伝えたところ、「その旨記録することになりますが、それでよければ申告なしのまま処理します」と言われ、今のところ、申告せずに済んでいます。

 申告しなくても、マイナンバーを必要とする行政機関等はしかるべき手段で私のマイナンバーを調べて活用できるので、特に問題は生じていないようです。それなのに、わざわざ民間で様々な書面にマイナンバーを記載しなければならない仕組みになっているのは何故なんでしょうか。マイナンバーが記載された書面を取得すれば、特定個人情報として厳格な管理が求められるので、へたに取得しないに限ると思うのですが。。。

  などなど、個人的に色々と疑問もあるため、ささやかな抵抗を続けております。

 マイナンバーを申告しないとどうなるのか、具体的にどういう不都合が生じるのか、今後も私自身の体験を随時お伝えしていきたいと思います。

                                                    2016年11月記 弁護士 酒井 桃子

夫婦同姓の最高裁判決について

 夫婦同姓制度についての最高裁判決が2015年12月16日になされました。

 「夫婦は同姓」とする民法の規定は憲法に違反しない。但し、夫婦が選択して夫婦別姓を名乗ることに合理性がないと判断した訳ではなく、この制度の在り方は国会で論じ判断するものとするという内容です。明治時代から100年以上続く民法の規定に最高裁がどう判断するか注目されましたが、「どちらの姓を選ぶかは当事者にゆだねられている。また夫婦同姓は社会に定着しており、家族の姓を一つに定めることには合理性がある」という理由で合憲とされました。
 訴えたのは女性ですが、改姓によって個人のアイデンティティーが失われ、個人の尊厳に違反すると主張しました。確かに姓の選択は夫婦にゆだねられていますが、現実には女性の方が改姓するのが圧倒的に多いです。我が家もどちらの姓を選択するか議論した覚えがありますが、やはり夫の姓を選択することになりました。やはり女性に分が悪い。旧姓の通称使用が広まることで一定程度は女性側の不利益を緩和できるという実情が考慮されていますが、15人の裁判官のうち5人が違憲とし、そのうち3人の女性裁判官が全員違憲と判断したのも自立した女性の立場からみれば違憲と映るというのが現実なのかもしれません。

 合憲といっても、今回の最高裁の判断はいわば消極的合憲判断で、選択的別姓が不合理とまでは言っておらず、国会での判断すなわち国民の判断、世論に最終的にはゆだねた形になりました。
 私個人は夫婦別姓でも構いませんが、生まれた子供が両親双方と同姓であるというのも子供にとって良いことではないかとも思ったりします。しかし、子供が片親と違った姓をもったからといって、心身の成長に弊害が生じるというデータはなく、子供に対する両親の愛情の質に軽重が生ずるわけでもないからあまり説得力はないかもしれません。家族の絆が壊れるという意見もありますが、同じ儒教の影響を受けた中国や韓国は別姓が原則で、それでも家族が壊れたとか夫婦仲、家族仲が悪いということは聞きません。

 日本の風土、社会に合わないという意見もありますが、日本も明治時代の半ばまでは夫婦別姓だったということで、このことはあまり知られていません。明治になって戸籍制度が整備されてから夫婦は同姓となったのであって、その歴史はそれほど長くありません。今後はますます女性の社会進出が求められることになるでしょうが、経済的にも自立し男性と対等となればなるほど、呼び親しまれた旧姓のままで通したいと希望する女性は増え、選択的夫婦別姓の声は大きくなっていくのを止めることはできないのかもしれません。

 面白い川柳があります。
       旧姓で呼ばれてときめき蘇り
 自立したい女性のささやかな思いと受け止めましょう。
 こんな風に言われた御仁もいるはずです。
       母さんと呼ぶなと妻にしかられて
       お父ちゃん愛してるより自立して

 今の男性も同様に自立しなければならないでしょう。

                                    以上

                     平成27年12月 弁護士 森田太三

成人年齢引下げ、このままで大丈夫か

 「18歳で成人だということが決まりました」と言っても話はそれで終わりません。一部反対という雑感を述べたいのです。

 まず、成人というのは「民法上そうなる」ということです。「それならいいではないか民法が生活の基本を決めているのでしょう」という反応は
健全且つ正しいのですが、例外があります。それは「特別法は別だ」といいうことです。
 具体的には「少年法をどうするか、18歳から、これまでの成人と同じに、通常の刑事裁判手続きにするのか」「金銭・契約などでこれまでの成人と同じ扱いにしてよいのか、18歳くらいでは詐欺もしくは類似の事件あるいは不利であることのわからないままサインするなどで、さまざまな形で被害者になりやすい、そこを放置するのは大変心配だ」ということです。いずれも特別法で例外の定めをするべきだと言う議論に結びつきます。詐欺被害などについては、結局、なんらかの保護規定を設けるか・そのための特別法を作るかという話しになるでしょう。例えば「保証人にはなれない」とか「一定金額以上は扱えない」とか「契約しても場合によっては取り消せるようにする」などです。

 少年法については意見が分かれるだろうと思います。それは、非常にセンセーショナルな事件が起きたり、大きく報道されたりすることも一因だろうと思います。「こんなことをするとはけしからん厳罰にすべきだ」という考えが増えていくと、特別扱いは不要だということになりやすいでしょう。この点について弁護士で少年事件を扱っている人の意見は「少年の矯正・社会復帰という面で少年法による運用は、おおきな成果を上げてきている、現に統計上少年事件が減ってきているのはその運用によるところが大きい。従って現行制度を維持すべきだ」というものです。はっきりとした統計上の根拠に基づいての意見です。弁護士の多数はこれに賛成しています。私もこの意見に賛成します。私なりの意見を付け加えると、人一人が社会復帰することは、目に見えにくいが全体として非常に有益であるというものです。それと「どんな人にも、どんなケースでも最低ワンチャンスを与えるべきだ」と考えるからです。人とはそう強いものではない、誰にでも失敗くらいはある、というのが実感だからです。皆さんはどのようにお考えでしょうか。

 お金についての問題、特に詐欺被害やそれと知らずに不利な契約を結んでしまうケースが想定されるため、18・19歳段階では、はっきりと「保護規定が必要だ」と考えます。それはほんとに多くの法律相談をやってきたからです。大人でも同じですが、優しくて素直な人が騙されやすいのです。被害といっても、若い人には財産はないのですから、実際には「借金を負わせられる」のです。つまり、18・19歳という時点で、つまり人生の実質的な出発点で「マイナスにされてしまう」のです。これは許されるべきではないでしょう。本来、成人であっても、騙された人は同情されるべきであり、放置すべきではありません。まして18・19歳ではなおさらです。これまでの職業的な体験から断言します。

 「騙される方が悪い、愚かだ」という考えは広く存在しています。ですがそれは唾棄すべきものです、捨て去ってください。「騙すほうを放置してよいのですか?どちらが悪いのですか?」と正面から問われると、大多数は、「それは騙す方がよくない」とお考えになるでしょう。実際に、学生時代に友人を助けるつもりで裏切られたようなケースは、非常に重大な人間不信に陥ります、見ていても大変辛い状況になります。勿論高齢で被害に遭った方も同じように同情さるべきです。生活という点では高齢者の方が大変ですが、それは財産を取り戻すという内容です。18・19歳時点では、マイナスからの出発ということになるのです。そうならないように保護されることは必要であり、社会にとっても絶対に有益な結果をもたらします。

 今後の方向を決める立法に向けての動きが今始まっていますが、上記の私の意見に対する多くの方の賛同があれば必ず保護法制への力になると確信しています。
                                      以上

                     平成27年11月 弁護士 小林政秀

集団的自衛権の行使を可能とする安保法案

 2015年9月19日午前2時過ぎ、集団的自衛権の行使を可能とする安保法案が可決成立しました。
 今回の安保法案については、学生を中心とした抗議活動が全国各地で繰り広げられ、ニュースでも取り上げられて話題になりましたが、皆さんはどのように思われましたか?

 政府は、今の国際情勢の下で平和を維持するためには必要な法律だ、憲法9条集団的自衛権を否定するものではないのだと説明していますが、圧倒的多数の憲法学者、元最高裁長官、元内閣法制局長官、全国すべての弁護士会から違憲だと指摘されています。
 従来の憲法解釈を無視し、専門家の意見を無視し、世論調査やデモから見えてくる市民の反対の声をも無視して、法律案を強行採決してしまうというのは前代未聞の事態です。
 戦前には治安維持法が制定され、言論弾圧がなされ、政府や軍の批判ができなくなり、軍の暴走を許し、戦争に突き進んだという歴史がありました。その歴史に対する反省から、「立憲主義」の憲法が制定され、国家権力の暴走を止められるようにしたはずなのですが、今回のように憲法解釈を恣意的に変更できるとなれば、憲法は歯止めにならなくなってしまいます。
 議会制民主主義なのだから、国会で決めた事に文句をいうのはおかしいと言う人もいますが、国会も国家権力であり、憲法に拘束されるのです。憲法違反の法律を制定することは許されません。どうしても憲法に抵触する法律を制定する必要があるというのであれば、まず、憲法を改正するべきで、そのための手続も憲法は定めています。
 ところが、今回の安保法制は、参考人として国会に招致された3人の憲法学者全員から憲法違反だと指摘され、更に、圧倒的多数の憲法学者、元最高裁長官、元内閣法制局長官、全国すべての弁護士会からも憲法違反だと指摘されるほどに、憲法違反が明白であったにもかかわらず、憲法改正の手続をとることも、法案を修正することもなく、強行採決されてしまいました。過去に例のない異常事態です。
 もちろん、法律が憲法違反かどうかを最終的に判断するのは裁判所ですが、日本には憲法裁判所がないため、通常の裁判の中で必要がない限り、憲法違反かどうかを裁判所が判断することはできません。裁判所の判断を待っていたら、いつになるかわかりません。その間、憲法に違反することが明らかな法律を放置すべきではなく、一日も早く国会自ら廃止してほしいものです。
 安倍内閣に逆らえない与党議員が多数を占める今の国会には期待できませんが、国会議員を選挙で選んでいるのは私たち有権者です。私たち一人一人が、それぞれのやり方で、国会議員に市民の声を伝えていくこと、日頃の国会議員の言動をよく見て投票することが、国会の暴走を防ぎ、憲法を守ることにつながるはずです。
 日々の生活では仕事や家庭のことで忙しく、政治には無関心になりがちですが、日本を戦前にしないために、政治の動きにしっかり目を光らせていかなければと思います。

                      平成27年9月 弁護士 酒井桃子

身近にある新宿歴史博物館

 わかばの風法律事務所のビルの目の前は小規模の三栄公園がある。近所の子供たちの遊び場であり、年に数回は町内のお祭りやボランティア企画などでにぎわう憩いの場である。大きな銀杏の木があり、冬場には黄金の葉を光らせて美しいが、2011年3月11日の東日本大震災の時には緊急の避難場所にもなり、ビルを飛び出して公園に待機した記憶がまだ生々しい。ともかく、小ぶりだが何かにつけ市民にその存在をアピールする公園である。
 さて、公園の隣には新宿通り方向に四谷税務署があるが、それとは反対の方向に新宿歴史博物館があるのをご存じだろうか。四ツ谷駅から四谷3丁目の間の、新宿通りからは一本奥に入った通り、通称三栄通りからは横道に入るが、その一角に白いブロック石の装飾道路が続き、急に落ち着いた閑静な風情の道を歩いて150メートルも行けば、小じんまりとしているものの3階建ての新宿区立の博物館がある。こんなに近くにいてもこれまで2,3回しか足を運ぶことはなかったが、時々気にはなっている博物館である。
 玄関前の横には、旧四谷見附橋の欄干の一部が展示されている。この橋は1913年に作られ1991年に架け替えられて、今も多くの人が行き交う橋として今日に至っているが、当時のバロック様式の鉄骨の一部がここに保存されている。
 3階建てのうち地下1階が常設展示室と企画展示室となっていて、今、企画展示室には皆さんご存知の紀伊国屋書店のその創業者である田辺茂一生誕110年を記念して、田辺茂一と新宿にゆかりの深かった作家50人の直筆原稿と写真、似顔絵が展示されている。
 さて、常設展示室は大方の歴史博物館がそうであるように、縄文時代の土器から中世、そして江戸から近代へと新宿の歴史を追っている。
 江戸の新宿といえば内藤新宿甲州街道の宿場町が有名。名所江戸百景の浮き世絵にも描かれている。絵の右半分が馬のお尻と足で大胆に描かれたデザインチックなあれである。この宿場町を起点として青梅街道と甲州街道が分かれてゆくが、これは現在もそのまま同じである。
 昭和初期の展示では、復元された文化住宅の模型がある。大正末から昭和の初めにかけて、山手線の外側にサラリーマンの住宅が立ち並んだという。小規模の和風住宅の小さな玄関わきに、洋瓦・洋しっくい仕上げの洋間の応接をつけて流行した「文化住宅」である。4畳半の茶の間には丸いちゃぶ台があり、夕餉の献立が乗っていたが、何故か、当たり芸「清水の次郎長伝」を演じた二代目広沢虎造浪曲が静かに流れていたのが、僅かに残る幼いころの記憶の妙にノスタルジックな感情を誘うのであった。
 皆さんもちょっと足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
 
                     2015年6月30日  森田太三

〒160-0008 東京都新宿区三栄町23-1 ライラック三栄ビル3階  電話03-3357-1751 FAX03-3357-1788